経営の打席に立つためにILPへ。運命的な出会い、研究者と共同創業へ|ILP Alumni Interview Vol.4

研究領域屈指のVC・アクセラレーターのBeyond Next Venturesが、ディープテックで社会を変える【未来の経営人材(CxO)】を輩出するために運営する「INNOVATION LEADERS PROGRAM」(通称、ILP)の卒業生インタビューシリーズ。

ILP第2期生 梶さんは、独自の技術で低価格高品質の義肢装具を開発する研究シーズ「インスタリム」の事業化にコミット。プログラム終了後、現インスタリムCEOの徳島さんと共に、共同創業者として同社に参画します。

プロフィール

インスタリム株式会社 共同創業者 CSO

梶 芳朗氏

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。2009年にソニーに入社し、社内弁理士としてPCやPlayStationなどの特許業務を担当後、A.T.カーニーにてハイテク・通信業界を中心する大企業への事業戦略、海外展開、M&A、BPRなどの経営コンサルティングに従事。その後IPOスタートアップ2社(ユーザベース、マネーフォワード)の事業開発マネージャーとして、プロダクト企画、M&A/PMI、中長期戦略策定、新規事業開発などに従事。2017年より共同創業者としてインスタリムに参画。

ーベンチャー2社をご経験されていますが、ILPにはどのタイミングで出会われたのですか?

ILPに出会ったのは、転職したベンチャーで直面した「経営者ニワタマ問題」を乗り越えるために、経営者の循環に入る機会を模索しているときです。

「経営者ニワタマ問題」は私の勝手な造語ですが、「経営経験がない=経営のチャンスが回ってこない」というニワタマです。

「経営は、基本的に経営経験がある人に任せることが多く、任された経験と実績により、さらに大きな経営を任され…と循環していくので、最初の一歩が非常に難しい」という話をとあるセミナーで聞いたことがあります。

当時の私はコンサルスキルを評価していただいた一方で、社内でも事業家というよりは社内コンサル的な立場で携わることが多かったんです。もっと直接的に経営に携わりたいと思う気持ちが高まると共に、このままでは経営者という一段上の立場にいけないのでは、と感じ始めました。

この問題を乗り越えるために、チャンスをじっと待つのも一つの方法ですが、上司・ポスト・業績・タイミングなど自分でコントロールできない要素が多いなと。それだったら、早く経営者として「打席に立つ」ために、自ら事業立ち上げに参画していこうと思ったんです。と同時に、一発勝負にかけるのではなく、週末起業のように小さく始めて自分が上手くできそうか検証すべきなのでは、という考えもありました。

そんな私にとってILPはぴったりでした。現職を続けながら創業前の有望な研究シーズとの事業化に挑戦できると知り、すぐに応募を決めました。

ーILPでインスタリムとの運命の出会いがあったわけですね?

満を持して参加したILPで、2カ月間事業化を手伝う研究シーズとして出会ったのが「インスタリム」でした。独自の技術で低価格高品質の義肢装具を開発し、世界の人に届けようとしている彼らの事業は、社会的意義があると共に事業性もあり、とても魅力的でした。

特に当時の代表で現CEOの徳島は、「あ、こいつと一緒にやりたい」と思わせてくれるような人でした。強いパッションを持ちながら、自分の考えに固執しない柔軟性や誠実さがあります。一方で、助けたくなるような隙もあります。後に彼と共同創業したのも、そんな人柄を信頼できたからです。

プログラム開始当初は、インスタリム側からすれば全く異分野な私という人間に対して戸惑いや警戒があったかもしれません。しかし、ピッチ大会に向けて事業プランを磨き上げる中でコンサル経験を生かせる場面もあり、徐々にメンバーから信頼されるようになりました。

ー徳島さんとの共同創業は、ILP卒業後すぐだったのですか?

いえ、ILPでインスタリムメンバーとの活動を終えた後、フィンテックベンチャーに転職しました。しかし、約半年後に徳島から、あるメンバーが抜けたことなどをきっかけに、経営を担う仲間を探しているとの連絡をもらいました。

その時の私は複数のスタートアップをアドバイザーのような立場で支援していましたが、徳島の話を聞くうちに「世界中のQuality Of Lifeを上げる可能性を秘めた素晴らしい技術が、経営仲間が足りないがために上手くいっていないなんて勿体無い」という気持ちが強くなり、もっとリスクをとって深く関わる決意をしました。

そして、2018年の4月に徳島と共同創業します。徳島はプロダクトや医療機器全般のアイデアや経験、ターゲット市場にしているフィリピンでのネットワークなど、私にはないものを持っていました。一方でデザイナー出身の彼が必ずしも得意でない事業計画や資金調達などは私が補えます。互いに足りないものを補い合える共同創業者となりました。

現在では複数の支援プログラムにも採択され、社会的意義が非常にあるビジネスかつ競合が少ないので、その点では様々な立場の方から応援していただきやすく、「難しい課題の方が実は簡単」(馬田隆明著「逆説のスタートアップ思考」より)という言葉は本当かも、と思っています。

メーカー時代に感じた事業を生み出せない悔しさから始まったキャリアの変遷ですが、戦略コンサルや上場ベンチャーを経験することで従来の日本の製造業の課題をより客観的に理解することができました。インスタリムではその学びを活かしていますので、“新しい日本のものづくり”でリベンジしていきたいと思います。

Beyond Next Ventures

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