起業家の隣でスタートアップ経営。出会い、自信が大きな財産に|ILP Alumni Interview Vol.10

研究領域屈指のVC・アクセラレーターのBeyond Next Venturesが、ディープテックで社会を変える【未来の経営人材(CxO)】を輩出するために運営する「INNOVATION LEADERS PROGRAM」(通称、ILP)の卒業生インタビューシリーズ。

ILP第9期生 間島さん、宮之原さん、八尾さんは、「研究・ビジネスに対する視座を高めたい」「一個人として成長したい」「自身のスキルをスタートアップで試したい」という思いでILPに参加されました。

プロフィール

日系コンサルティングファーム 戦略コンサルタント

間島さん

入社3年目、現職では主に農林水産業・食品、イノベーション、観光分野の政策立案、戦略策定業務に従事。プログラム参加中は、創業初期の農業領域の画像解析チームに参加。同チームの社長は同世代であり、”仲間感覚”を持って活動、出張にも同行。

国内製薬会社

宮之原さん

研究職入社4年目、京都大学大学院薬学研究科博士後期課程修了、博士(薬科学)。現職では新規治療薬開発における創薬標的コンセプト検証を中心とした薬理研究に従事。プログラム中は、創業初期のアカデミア発創薬チームに参加。

コンシューマー向け製薬メーカー マーケティング職

八尾さん

現職では、OTC医薬品のマーケティングを担当。プログラム中はバイオ系素材の創業前チームに参加。プログラム参加は2回目で、前回はバイオ系素材の創業後チームの支援を経験。

ーILPに参加したきっかけを教えてください。

間島:農学部出身で、農林水産分野におけるテクノロジーの社会実装に興味があり、仕事でも大学発ベンチャー創出や産学連携などのイノベーションエコシステムの形成に係る仕事をしていました。ILPを通じて技術系スタートアップをお手伝いしつつ、同時に事業立ち上げのスキルセットやマインドセットを身に付けたいと思い参加しました。

宮之原:「一個人として成長したい」という想いが強くあったからです。そのためには、違う環境での活動にできるだけ触れて、とにかく多くの、そして様々な角度からの刺激を受けることが重要ではないかと。

特に今は環境が整った大きな組織で研究をしていますが、最小単位の組織であるスタートアップの創業時期の活動や、それを取り巻くエコシステムに触れることで、研究・ビジネス全体に対する視座を高めたいと考えていました。

そんな中でILPのことを知り、現職の研究者としての環境に身を置いたままで新しい仕事ができることがとても魅力的に映り、参加を即決しました。

八尾:以前ビジネススクールに通っていた際にILPの説明会に参加する機会があり、プログラムの存在は知っていました。マーケターとしての経験が長くなってきましたが、会社では上司・同僚・他部門の方に助けていただいて仕事が成立しています。いちマーケターとして外でどれくらい通用するのか、ILPを通じて試してみたいという想いがあり、挑戦することにしました。

ーどんな研究の事業化に取り組まれましたか?

八尾バイオ系素材の創業前チームに参加しました。素材の機能性は素晴らしく、想定される事業領域が多岐に渡ったため、製品セグメント・ターゲットの洗い出しや優先順位付け、ビジネスモデルの構築が課題でした。創業チームはBtoBメーカー出身の方が中心でしたので、BtoCの視点での製品アイデア出しやコンセプト作成、ターゲティング検討や消費者調査での設問設定などで貢献できたかと思います。

チーム内のILPメンバーは、ファイナンス専門の方と新規事業開発に強い方がいて、各々の専門性を活かしたサポートができました。異なる視点からの指摘・サポートは私自身とても勉強になりました。

宮之原:私は創業前の創薬チームに参加しました。そのチームは、アカデミア内での研究成果の積み上げや基礎研究ベースでの技術のバラエティはあったのですが、どうビジネスに結びつけるかというところの打ち手を考えるフェーズにありました。序盤の最重要課題は明らかにビジネスモデルの策定だったこともあり、経営に疎い自分がこのチームでどう貢献できるか焦っていた部分が正直ありました。

一方で私以外のILPメンバー2名は、コンサル経験豊富で経営面に強みを持った本当に頼りになる方々でした。お一人は海外MBAホルダーでIPO関連やパートナーとの連携時期等に明るい方でしたし、もうお一人は課題抽出やプロジェクトマネジメントが非常に得意な方でした。

お二人のリーダーシップに支えられながら、私自身は先生の高度な専門性を伴うアカデミア技術の翻訳、創薬モデルとしての実現可能性をチーム全体に共有するなど、サイエンスとビジネスを繋ぐ立場としての役割を見出すことができました。

間島:私は、画像解析技術を活用して育種の高速化を目指す創業初期のアグリテックベンチャーに参加しました。そのチームの社長の「日本の良い技術や埋もれている遺伝子資源をマネタイズしていこう。小規模な農家でも世界で戦っていけるようなインフラを整えよう」というビジョンに共感しました。

私以外のILPメンバーもそれぞれ強みがあり、VC出身でファイナンスに強い方、商社出身でマーケットや新規事業に強い方がいました。自分自身は、スタートアップ的なビジネスを作ったことがない中で、農学部というバックグラウンドを活かして、農家や種苗メーカーとの繋がりや、コンサルで培ったデータの見せ方という面で貢献できたかなと思います。

ーILP期間中、最も印象的だったことは何ですか?

間島:自分がジョインしたスタートアップは独自の農作物生産を考えていました。プランを具体的に進めるには「生産してくれるパートナーを探さないと」となって。そこで、自分の農学部時代のコネクションを活用し農家にアポイントをとって、社長と一緒に出張で福岡に行ったんです。

最終的にはその農家さんはパートナーにはなりませんでしたが、課題があれば即経営者が自らが動いて、泥臭く交渉して事業を動かす。そのスタートアップらしいスピード感や肌触りを感じられたことはとても印象的でした。

宮之原:この2か月間は活動量も多く大変でしたが、その慌ただしさも含めて全部が思い出です。その中でも、最後のピッチ大会ではスタートアップ人材っぽく(笑)、チームを代表して発表を担当できたことは特に記憶に残る体験でした。

ピッチ大会が終わった後、メンターさんをはじめ様々な方から良いフィードバックや労いのメッセージを頂きました。最初は正直不安もありましたが、自ら手を上げることで周囲からの信頼にも繋がりました。事業の行く末に大きく影響する舞台を任せていただいたチームの皆さまには本当に感謝しています。

また、事業計画を進めていく上での意思決定のスピード感はやっぱり新鮮でした。大きな組織では、スタートアップの「ここまでに資金調達しなければ終わってしまう」というようなデッドラインに対する切実な意識を常に共有することは簡単ではありません。やはりスタートアップという最小単位だからこそ発揮されるアジリティはとても印象的でした。

八尾:ターゲットセグメントをどこに設定するかで創業チーム×ILPメンバーで白熱した議論をしたことが印象に残っています。大きな市場を取りに行くか、ペインが深いスモールマスを取りに行くかで意見が割れ、すり合わせに時間を要しました。

出会って数週間のメンバーで共通言語のない中、合意形成を図ることの難しさを感じましたが、概念の伝え方や合意形成の方向性をILPメンバーで相談しながら進めました。大企業では意思決定の枠組みが決まっていることがほとんどですが、共通言語や枠組みがないフラットな組織で意思決定を行う難しさと醍醐味を感じる良い経験となりました。

ーILPに参加後、手元に残ったものは何ですか?

宮之原:まずは「人脈」です。チームメンバーとの繋がりはもちろん、別のバイオテックチームでも意気投合した方がいました。メンターさんからも「これからも(悩んだときに)声かけてね」と言っていただき、世代や分野を問わず様々な専門性に溢れた方々と接点を持つことができ、一気にネットワークが拡がりました。また、参加前から期待していた「スタートアップでの働き方の感触を掴む」という部分もよく見えました。

そして一番は、「自信」です。「自分にできるのかな?」と迷ったとき、とにかくやってみようの精神で挑戦してみること、行動を起こすハードルを下げる重要性を再認識しました。

間島:出会い・コミュニティ・繋がりのところはすごく大きな資産になったかなと思います。そして、同世代で非常に高い熱量をもつ起業家との出会いは、自分の仕事のモチベーションにも繋がりました。

八尾:今持っているマーケティングの知見が外でも役立てられるという自信を得ることができました。また創業メンバーや他のILPメンバーの専門性の高さやスピード感に刺激をいただいたため、今後の仕事に活かしていきたいと思います。

ーILPはどんな人におすすめですか?

八尾:基本オンラインでの活動でしたが、ほぼワンオペ育児の中どれぐらい貢献できるか不安でした。実際、子どもにご飯を食べさせながらミーティングに参加することもありましたが、メンターさんや他のILPメンバーも子育てしながら参加されていました。各々の状況を温かく受け入れながら進める土壌があり、全員で最後まで走り切ることができたので、子育て中で参加に迷う方がいらっしゃったら背中を押したいです。

間島:若手の会社勤めの皆さんは参加してみてほしいです。目の前の業務で手いっぱいであまりワクワク感がない方もいるのではないかと。起業家のように、やりたいことに没頭して仕事に打ち込んでいる方とぜひ接点を持っていただきたいです。

あとは、今後人材の流動化が加速する中で、色んなキャリアの選択肢を考える必要があると思うので、若手のうちにスタートアップ経営に触れる経験をしておくと良いのではと思います。

宮之原:世の中には、研究をずっとやってきたけど、経営やスタートアップに興味のある人って少なからずいると思うんです。私も社会人歴が浅く実質的に研究しかしておらず、ビジネスに疎いというコンプレックスを勝手に持っていました。でもいざふたを開けてみるとプログラム中ほとんど気にならなかったです。他のILPメンバーやメンターさんなどのフォローも十分に受けられましたし、コミットした分だけ得られるフィードバックも大きかったです。

一方、平日の夜だけでなく土日も使いますし、それなりに大変です…!でもそれすらも醍醐味として捉えられる方にとっては本当に良いことだらけのプログラムだと思います。そんな方はぜひ挑戦してみてください!

Beyond Next Ventures

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